走死走愛死天流

白くても、黒くても、わたしはわたし。

変化

「大丈夫だよ、俺は変わらないから」

すごく、ほっとした。

最近のわたしは変化を恐れていた。

移ろうものが怖かった。

幼虫みたいに必死にもがいて、もがいて、なんだか疲れて蛹になって、そして動けなくなったのだ。

でも、空の青さを思い出したから。

恋しくなったら、じきに羽ばたくだろう。

ふとした瞬間にどうしようもなく救われることがある。

だから人間ってやつが嫌いで大好きなんだ。

戦士

小学生の頃、とある犬たちのマンガに夢中になっていた時期があった。

母の愛読書で、実家の本棚にずらりと並んでいた。

シリーズのうちのひとつを、最近また読み始めた。

当時、恐らく途中で本を閉じ、その次のシリーズを手に取ったのだったと記憶している。

しかし、わたしの性格上、途中で離れることはあっても、離れた以上はそれと繋がりのあるものを追うことはないはずなのでおかしいなあと感じていた。

今回もページを捲る手を止めるのが困難なほど熱中したわけなのだが、やがて終盤を迎え、わたしはすべてを悟った。

1話から登場する主人公の名付け親にもなったセッターが命を落としてしまった。

臆病者で長い物には巻かれろという言葉を体現したような性格で、お調子者の面もあり、足は速いが戦闘には不向きなタイプ。

ただ、困っている者を見捨てられない優しさと頼まれたことは最後までやり遂げようと努める心を持ち合わせている。

作中では"優しいだけで生きてこられた男"とも言われている犬だった。

わたしの推しは別にいるのだが、トップクラスで好きな犬だった。

やさしい、やさしい犬だった。

そんな彼が亡くなり、涙は留めどなく溢れた。

からだが震えて呼吸がしづらかった。

わたしはただの読者なのに、目の前で悲劇が起こり、冷たい雨のなか雷にでも打たれたかのような衝撃と絶望を感じた。

彼の最期を見て、記憶が蘇った。

そのあとなんとか最後まで読んだけれど、あまり内容が入ってこなかった。

きっと当時も同じような思いをして、心を守るために忘却したのだろう。

あまりにも悲しかったから。

困っている者を見捨てられない優しい彼。

裏を返せば、皆の役に立ち、必要とされ認められたいと願う寂しがり屋なのだ。

優しさだけで生きてこられた男は、その優しさのために空へと旅立ってしまった。

それでもわたしは彼の気持ちがわかるような気がするのだ。

彼のような勇敢な戦士にはなれないけれど。

どんな結末が待ち受けていたとしても、常に思いやりをもって生きていきたいと思う。

弱くて強いわたしたちはひとりじゃない。

ひとりにはなれない。

 

今夜は生憎の曇り空で目には見えないけれど、いつだってそこには星々が輝いている。

わたしたちを見守ってくれているから。

ありがとう、GB。

さようなら、GB。

愛を込めて。

 

 

 

なんてね

もう ながいあいだ

きみの腕のなかでしか眠ってなかったから

どんな声で鳴いたらいいかわかんないや

 

きみが隣からいなくなって一ヶ月経つみたい。

まだ心臓を雑巾絞りされてるような苦しみに襲われることもあるけれど、だいぶ慣れたよ。

きみを失った傷は癒えないけど、きみのいない日々が当たり前になってきた。

完全に過去のひとにはできないけど、前を向いて歩いているよ。

始まりも終わりもあの交差点だったね。

わたしたち映画みたいな恋をしたけど、わたしはそんなドラマティックな日々を望んではいなかったよ。

ただ、きみと笑って、泣いて、喧嘩して、仲直りして、抱き合って、同じベッドで眠って、ときどきデートをして。

そんな毎日を過ごしていたかった。

毎年一緒に映画を観に行く約束、覚えてる?

きっと、ひとりか別のだれかと並んで観るんだよね。

よくわからないけど、悲しくてたまらないけど、きみと別れて正解だったと思うの。

もう手を繋ぐことも、抱きしめることも、キスすることもできないけど、きみの隣を歩くこともないけど、わたしの左腕にはきみとの愛が刻まれているからそんなに寂しくはないよ。

大切なものは宝箱にしまおう。

きれいなものも、そうじゃないものも。

楽しかったね、ダーリン。

本当に愛してた。

 

 

わたしのこと

最近、自分の気持ちがわからなくて迷走していたように思う。

未だにわからないのだが、少し自分自身について考えてみた。

先日、高校の同級生と遊ぶ機会があった。

SNSでときどき話す彼女と会うのは実に三年ぶりだった。

少し緊張していたが、待ち合わせの場所で恐る恐る声をかけると嬉しそうな笑顔を向けてくれ、様々な話に花が咲いた。

会っていない月日の長さなど杞憂に過ぎなかったのだ。

それはそれは楽しい一日だった。

遊びの後半にゲームセンターに行ってUFOキャッチャーをしているとき、彼女が見つめる愛らしいうさぎのぬいぐるみをプレゼントしたくなった。

わたしは特別UFOキャッチャーが得意なわけではない。

しかし、どうしても取ってあげたかった。

何度も挑み、ようやく取れたうさぎを渡したとき、昔から大人びていた彼女が少女のように目をキラキラさせて喜ぶ姿を見て、何故か涙が出そうなくらい嬉しかった。

あぁこの顔が見たかったんだと心底思った。

いままでの人生を振り返ると、幼い頃からわたしの行動でだれかが喜んでくれることを好んでいた、もとい生きがいに感じていたような気がする。

あまり裕福な家庭ではなかったが、ときどき貰える小遣いを母へのプレゼントに使っていた。

純粋に母の嬉しそうな顔が見たかったのもあるが、そうすることで己の存在を許されるようなそんな救いがあったからだ。

きっと、どこかに出かけて買い物をしているときにあのひとの顔が浮かぶことも、自分の分だけなにかを買ったときに罪悪感があるのも、そのせいなのだと思う。

わたしはだれかに喜んでもらえないと自分の存在意義を感じることができないのだ。

だれかに褒められたり感謝されたりすることに、自分の生の価値を見出しているのだ。

わたしは愛されないことが怖い。

嫌われるのが怖い、というのとは似ているようでどこか違う。

父からの愛情を感じられないまま大人になってしまった業なのかもしれない。

ずっと愛に飢え続けている。

わたしのことを無条件に愛してくれるひとが欲しい。

だれかのいちばんになりたい。

でも、束縛はしないし、依存もしない。

否、できないのかもしれない。

自信がないから、縛ることは恐れ多いし、真に信用することもできない。

心のどこかでいつも諦めている。

そのジレンマが苦しいのかもしれない。

だれかに愛されたいのに、大切にされたいのに、自ら都合のいい人間になっているような気もする。

ピエロになりきれず、理想と現実のギャップに頭を抱えている。

結局のところ、自分が本当はどうしたいのか、どうなりたいのかなんてわからない。

だれかと添い遂げたいような気もするし、ずっとひとりでいたほうがいいような気もする。

ただ、年老いて孤独に死んでいくのは嫌だとは思う。

まだ二十歳を過ぎて三年しか経っていないけれど、焦燥感と漠然とした不安が付きまとう。

わたしはこの先どうなるのだろう。

わたしのことを、わたしのことだけを愛してくれるひとはどこにいるのだろう。

きっと、そんなひとはいないから、だからせめてわたしが存在していていいのだと感じられる程度には愛してください。

もう多くは望みません。

わからない

炎はいつか燃え尽きる。

それはひょんなことからなのか、予め決められた運命なのか、わたしにはわからない。

 

最近、自分の心がわからない。

わたしは傷つくのが怖くて、いつしか見ないフリが得意になった。

見えないものも見えているものも、見ようとしなかった。

結末が変わらないなら、変えることに恐れをなすなら、見えないままのほうがいいと思っていた。

このままでもいいと心のどこかで諦めている。

このままじゃ嫌だと心のどこかで嘆いている。

このままでいたいと心のどこかで怯えている。

失うことに恐怖を感じている。

でも、本当はなにを失いたくないのだろう。

わからない。

愛か、生活か、時間か、理解者か、心か、約束か、それともきみ自身か。

 

もし、きみを失ったとしたら。

きっと、あの音楽を聴く度に、あの映画やアニメを観る度に、あの小説やマンガを読むときに、あのゲームをプレイする度に、あの場所に行く度に、あのごはんを食べる度に、あの景色を眺める度に、あの車を見かける度に、あの服を着る度に、あの靴を履く度に、あの匂いを嗅ぐ度に、思い出すのだろう。

わたしは半身を失くしたような、心に穴が開いたような、すごく大切なものを落としたような、そんな気持ちで日々を過ごすのだろう。

あの球体が本当はなにか知っている。

でも、きみが言うならそれはプラネタリウムなんだろう。

いまも昔も、これからも、それだけはわかるの。

ただ

ただ、一緒にいたいと思う。

皆それぞれが唯一であるのは前提として、愛するひとというのもまた己にとって唯一の存在であるから。

今日の夕焼け空は紫やオレンジや淡い水色が混ざっていて綺麗だと感じたこと。

夏の終わり、そして秋の始まりの空気を感じたこと。

初めて行った店の焼き鳥の焼き加減や塩加減が抜群だったこと。

ハイボールのおいしさをいままでより深く理解できたような気がすること。

グラスの結露が作った水溜りがハートの形に見えたこと。

そういえば、珍しく夢を見なかったこと。

地味な二日酔いだったこと。

そんな些細なことも、少しだけ特別なことも、あなたに聞いてほしいと思う。

唯一、あなたに。

わたしはあなたの唯一にはなれないかもしれない。

それはとても悲しいことだけれど、仕方のないことです。

自分自身も、唯一の存在なのです。

あなたにとっても、わたしにとっても。

でも、あとほんの少しでいい。

小指の爪くらいの大きさでいいの。

愛してほしい。

あなたからの愛が欲しい。

喉から手が出るほど欲しい。

愛は儚いもの。

美しくもないし。

壊れるときは一瞬です。

それでも、一緒にいたいと思う。

愛し、愛されたいと思う。

ただ、それだけ。

愛はドライフラワーよりも丁寧に慎重に触れなければあっさり壊れてしまうけれど、それと同時になによりも強いことを知っている。

愛は唯一つのもの。

かけがえのないもの。

身も心も癒し、乱し、ときには破滅にも導くもの。

それでも、一緒にいたいと思う。

ただ、それだけ。

 

少しだけ

「こういうのでいい」

目の前には少しだけ手抜きしたごはん。

たしかにおいしいけれど、少しだけ、少しだけ頑張って料理しているときのわたしの想いはどこへいくのだろうと思う。

もちろん、そんな想いなど自己満足でエゴでしかないのだけれど、少しだけ悲しくなってしまうのは許されるだろうか。

最近、巷では「こういうのでいい」という言葉が流行っているようだ。

それを目にする度、耳にする度、わたしのなかのなにかが死んでいくような。

好きになれない。

受け入れられない。

少しだけ。

最初にその呪いを世に広めたのはだれなのか。

少しだけ憎いと思う。

少しだけ。

でも、これからもわたしは作るのだと思う。

少しだけ手間のかかるごはんを。

スパイスからカレーを作る日も近いのだと思う。

「おいしい」と言って、胸を躍らせる子どものように愛情を頬張るあなたが見たいから。