走死走愛死天流

白くても、黒くても、わたしはわたし。

2024-01-01から1年間の記事一覧

少女

少女から女へと変わるのはどのタイミングなのだろう。 だれかに恋をして嫉妬の感情を知ったとき? 子宮から血が流れ出たとき? 性を利用したとき? 初めてセックスをしたとき? だれかから身を焦がすほど自分を求められたいと思ったとき? わたしはいつの間…

殻の中身は

今夜はポーチドエッグを作ろう。 沸騰した湯に、酢と塩を入れ、箸でぐるぐる混ぜて渦を発生させたところに、生卵を落とす。 殻の中身は柔いから、崩れないように、慎重に、丁寧に。 武装という名の化粧をして着飾ったわたしと、まっさらな素のわたし。 どち…

どす黒いもの

わたしのなかのどす黒いもの。 胸に渦巻くどす黒いもの。 息が上手にできないから、魚になった。 魚のわたしの鱗はどす黒い。 醜い鱗を剥がしても、流れるのはどす黒い血。 最初はそうじゃなかったの。 そうじゃなかったのよ。 きれいな、きれいな、色をして…

蛾の味

わたしは毎日いくつもの夢を見る。 夢の内容はだいたい覚えているが、なかには思い出せないものもあり、それがどんなものであったのか非常に興味をそそられる。 人間が覚えている夢と忘れてしまう夢にはなにか傾向があるのだろうか。 わたしは中学生の頃、夢…

平静と高熱のあいだ

風邪をひいたあたしに 「喉は痛くないの?」とママ 「ええ」 でも、胸は痛いわ。 熱のせいか、咳のせいか、酷く痛むからだを起こして本を読んだ。 一冊を読み終えるのに、昔の倍くらいの時間をかけて。 わたしは賭けていたのかもしれない。 なにかを祈るよう…

永遠

学生時代を思い出していた。 毎日のように映画をいくつも観て、様々な感情を抱いていたあの頃。 いまよりもずっと思考がぐちゃぐちゃで、けれども、買ったばかりの果物のように新鮮で豊かな香りをもっていたように思う。 なにも考えないという状態を知らず、…

大人になる

大人になる、とはどういうことだろう。 諦めることなのだろうか。 我慢することなのだろうか。 もし、そうなのだとしたら、とても悲しいことだと思う。 大人になるとは、大人にならざるを得なかった場面でなるべく綺麗に強がり続けた結果なのかもしれない。 …

「あの娘の曲さ」

どこかのバンドマンが歌うラブソング。 だれかが言う。 「その曲いいじゃん」 バンドマンは答える。 「だろ、あの娘の曲さ」 わたしもなりたいな。 どこかのバンドマンが矢印を向けるその女の子に。 わたしもなりたいな。 あー、わたしもなりたいな。 だれで…

貧しさとは

雨の香りがする。 なんとか用意した六万円を入れた財布代わりのポーチを片手に、外を眺めながら、ふと昔観た映画を思い出していた。 「秋の田の 仮庵の庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ」 実りの秋は過ぎ去り、冬の終わりも近づいた今日この頃。 ま…

潤っていたい

たまごがたくさん詰まった二割引きのカレイをカートに入れ、あれやこれやとスーパーを物色していると、野菜コーナーでキャベツを見ていたおばあちゃんが袋を開けるのに手こずっている場面に遭遇した。 「やりましょうか?」 と声をかけると、申し訳なさそう…