走死走愛死天流

白くても、黒くても、わたしはわたし。

平静と高熱のあいだ

風邪をひいたあたしに

「喉は痛くないの?」とママ

「ええ」

でも、胸は痛いわ。

 

熱のせいか、咳のせいか、酷く痛むからだを起こして本を読んだ。

一冊を読み終えるのに、昔の倍くらいの時間をかけて。

わたしは賭けていたのかもしれない。

なにかを祈るように、そっと。

怖かった。

いつの間にか、主人公にだれかを重ね、その恋人には自分を重ねて、多く感情を揺さぶられながら読んでいたように思う。

最近、自分が薄氷の上に立っているように感じることがあった。

美しい氷の大地を歩いたり、走ったり、はたまた滑ったりして夢中になっているうちに後戻りのできない薄氷まで来てしまったのか。

それとも、足元が薄氷であることなど端から承知の上であったのか。

どちらにせよ、それでも歩みを止められないわたしは愚かだろうか。

いくら平静を装っているつもりでも、高熱があるときのような夢を見てはいやな汗をかいて目を覚ます。

結局、本当に熱を出してしまったのだが。

熱があるとよく眠る。

途中何度も目を覚ますが、それこそ泥のように眠る。

いやな夢を見るのは怖いが、あくまで夢なので、いまのわたしには好都合なのかもしれない。

ひとりになると不安で泣き出しそうになるから。

平静と高熱のあいだで、今日はどんな夢を見るだろう。

現実になってほしい夢も、そうでない夢も、見たくない。

どちらにしたって、目が覚めたときに悲しい気持ちになるのは明白だから。

なんだか無性にコーヒーが飲みたい。